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メール・マガジン
「FNサービス 問題解決おたすけマン」
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★第113号 ’01−11−02★
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エントロピー
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●SF映画は滅多に
観ません。 近未来の都市が廃墟のように描かれたり、ハイテクが破壊
や殺戮にしか役立っていなかったりで、楽しくない。 作者たちが何故
そんな暗い想像に走るのか、私には不思議です。
WTCビル崩壊後の瓦礫映像はそれを連想させましたが、ついでに思い
出したのは、「技術の進歩は目覚ましい。 今や漫画に遅れること僅か
○○年」、という古いリーダーズ・ダイジェストの一口ジョーク。
漫画がそんなにススんでたとはなあ、、 笑った何年か後、人類は月に
降り立ち、<漫画との差>をやや狭めました。 以後、作家の直観力を
軽視しないことにし、その延長で、我が東京がSF映画的に荒廃した街
になる日も遠くないだろう、と私は恐れております。 しかし、
*
ともかくも活動している街を目の前に、その姿を具体的に思い浮かべる
ことは難しい。 廃墟化したWTCは、その意味で参考になりました。
やがて始まったアメリカ軍のタリバン攻撃。 もともとが
waste land 、その中のすでに瓦礫同然の街や陣地がさらに破壊されて行く。 空に雲
無く、地に樹木無し。 敵も隠れよう無かろう、、、
と思ったら、平地全域をネットする地下水路<カレーズ>というものが
ある、と言う。 旱魃続きで水位が下がり、格好の通路だろう、とも。
ビンラディン一味を捕らえようと躍起の米軍が、それに手を下すことは
無いだろうか? 1カ所でも壊せば、下流の人々は命の水を絶たれる、、
そこは米軍も用心してかかるだろうが、タリバンが壊して米軍になすり
付けることもあり得る。 どちらでも結果は同じ、アメリカ人が末永く
恨まれることは間違いありません。 その恨みで、いつか、
黴菌や毒がアメリカ全土の水源に流し込まれ、<現実がSFに追い付く
日>の到来が早まることにもなりかねない。 いや、アメリカだけじゃ
* *
済まないだろう。 アメリカの側に立った我々も、テロ組織から見れば
同じ<敵>なのだから。 <日の丸を見せる>前に我が要人たち、そう
したらどうなる、の<マイナス影響>をそこまで吟味しただろうか?
オウム事件以来その種の研究を重ね、大いに備えて来たアメリカですら、
アチコチを襲った<白い粉>には縮み上がりました。 じゃ、火元日本、
何して来た? 例によって<しない>で来た。
テロ攻撃に比べて対象が明白、その襲来が予測可能、遙かに対処しやす
かった<狂牛病>に対してすら、事実上何もしていなかった。 それが
<する>必要に迫られたとなると、一躍<世界一厳しい全頭検査体制>。
それも形が出来ただけで「安全宣言!」。 安っぽいというか、楽天的。
果たして実施に移るや、することが自治体ごとにバラバラ。
MUST、
WANT が共有化されていない、と察せられます。 人命に関わることだから厳密な方法であって欲しいが、得られる効果が同じなら簡素
化も必要。 粗で済むなら密は過剰、密でのみ達成し得ることなら粗を
採った自治体に改めてもらう必要があります。 その辺、どうなんだ?
と疑う人はいないようで、追加的報道ついに無し。 しかもそれには、
冷蔵在庫の1万3千トンや流通段階の商品をどうするか、は含まれない。
消費者不在歴然なのに農水相は得意満面。 むしろ滑稽、、と思いかけ、
そうか、<肉>は厚労省の管轄でカンケーナイんだ、と気付く。
再々批判されて来ながら一向に改まらない<縦割り行政>ですが、この
国家的一大事にこのジコチュウ、無秩序。 「挙国一致」はもはや死語。
* * *
かくて我らが近未来、ハッピー・エンド(英語では
happy ending)にはなりそうもない。 SF映画的荒涼索漠しか無いか、、で思い浮かんだ
一語、エントロピー。 行き着く先は無為、無秩序、、の自然法則です。
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●正しくは<熱力学第二法則>、
「物質とエネルギーは、使用可能なものから使用不可能なものへ、利用
可能なものから利用不可能なものへ、あるいは、秩序化されたものから
無秩序化されたものへ、と一方向にのみ変化する」という、現代物理学
唯一の絶対的真理。 一応おさらいしましょうか。
ジェレミー・リフキンが
< Entropy - A New World View >「エントロピーの法則」(祥伝社
1982)で詳しく教えます。
*
それは一種の測定法。 上記<変化>の程度を、「無秩序に近づくほど
エントロピー大」と定義します。 たとえば、石炭を燃やすと熱エネル
ギーが得られ、同時に色々なガスが発生し、拡散する。 燃えた石炭は
もう燃やせない、役立たない。 即ちこの石炭は<エントロピー最大>。
それ自体あるいは周辺の温度上昇として残存する熱も仕事には使えない。
即ちエントロピーとは、<もはや仕事に変換することの出来ないエネル
ギー量の度合い>のこと。
この語や概念の生みの親クラウジウスの結論は、「この世界では、エン
トロピーは常に最大へと向かう傾向がある」。 エントロピー最大とは、
物質やエネルギーの凝縮度が低下し、仕事が行なえなくなった状態です。
* *
WTCビルという建物や、そのテナント企業という<形>に凝縮されて
いた全てが、多くの人命と共に散って<有益な仕事が行えなくなった>
のは、まさに<エントロピー最大>、、 だから、あの映像で私の連想
が始まったのは不思議でなかったようです。 諸行無常、であればこそ
人間、何でも大切にすべき。 万物に神が宿ると信じるなら、破壊主義
は神への反逆。 アラーもお喜びになるまい。
せっかくの<凝縮>を無惨にぶち壊したテロ行為は、私も<凝縮>派だ、
許し難い。 建設的<凝縮>努力に価値を認めない、だから壊す、殺す、
それを良しとする、、 というのは宗教じゃない、カルトでしょう。
散らすだけで片付けもしない、テロはエントロピー促進の文化。
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●<凝縮>させるには、
エントロピーの流れに逆って悪戦苦闘しなくてはならない。 たとえば
<勉強>。 本やノートに散在している知識を脳に<凝縮>させるのは
ひと仕事。 その反対、散らす、忘れる、には何の努力も要りません。
富の断片を拾い集めるのも、固めておくのも、容易でない。 その反対、
<散>財は楽しいし、努力は要らない。 人材を集めるにも束ねるにも
長い努力が要るけれど、散らす、失うのに時間はかからない、、
勉強や事業、真に熱心な人が少ないのは、<凝縮>努力が辛いからです。
体力、意志、忍耐、運、、、 色々要るからです。 そこまで具わって
ない人は、、 自然の法則に従う、と言えばカッコイイが流されるだけ。
敢えて努力はせず、楽な方を選ぶ、散らす方へ行く、、 即ち<放蕩>。
昔はそんなの、ドウシヨウモナイ奴と蔑まれたものでしたが、今は流行
の<パラサイト>。 バカな親が養い、本人も恥としない。 かくて
社会の仕組みはガタガタ、家庭の躾ゼロ、キレるムカツク若者が増えて
無秩序化は絶望的に加速されております。
*
だからこそ、<凝縮>やその成果の維持に励む人々の努力は大いに尊敬
されて当然、と<化石>は思うがリフキンは、今は考えを改めるべきだ、
と言う。 地球資源は有限、なのに<文化生活>はあまりにも浪費的、、
よく働いて、色々発明するほど地球の終末が早まる、という文明の逆説。
リフキンが示すのは、エントロピー増大の面から見た欧米的合理主義の
限界です。 このままでは<クラウジウスの結論>通り。 それは世界
の<死>だから、やり方を変え、流れを食い止める必要がある、、 と
なると、欧米に追い付け、で来た我々も同罪。 効率本位、<凝縮>に
努めはしたが、自然破壊を促し、人間の精神を歪めてでは所詮<拡散>
行為でした。 <しない>方が正しかったかな?!
それにしても<する>文化の欧米人種、欲するままに資源や市場を奪い、
時に騙し、時に身勝手な理屈をこじつけながら攻め続け、富を<凝縮>
させると共に異文化側を抑圧して来ました。 その長きを通じて、
それぞれの部分では
Rational に対処したにせよ、全体としては不調和な状況を多々生み出し、異文化側に不満が積もり、溢れ、、 中東戦争、
湾岸戦争、ついには「これは戦争だ!」のテロ事件、、
「戦争ほど馬鹿げたエネルギー消費はない」、とリフキンも言いますが、
現実、人間世界は大小の国際紛争や内戦だらけ。 たださえ貧しい人々
がさらに壊し合って、一途に<エントロピー最大>へ向かうから哀しい。
せっかく授かったものや命を、、と惜しむのはコチラの無知。 当事者
には<
WANT では済まされない、 MUST でしかあり得ないもの>がある。即ちイデオロギー、宗教もその一つ。 これはまず、譲りませんな。
* *
この度の<戦争>も、片やピルグリム・ファーザース以来のキリスト教
国家アメリカ、対するイスラム由来の極端主義者たち。 どちらも譲る
気は無いから「馬鹿げたエネルギー消費」は避けがたかったが、もし
誰かが間に立って調整の労をとるべき、となったら、どちらの宗教にも
縁が薄く、仏教伝来の大昔から宗教的には寛大な我が<腰抜け>日本が、
意外に役立ち得るのかも知れません。
こだわるべき
MUST が無く、 WANT だけで考えることが出来る、という類い希な特性。 ただ惜しむらくは、共通語としての英語がカラッキシ。
通訳付きの仲介者、じゃサマになりません。 やはり望み無し、か、、
* * *
ケンカは感情に発する原始的な行為。 いやな奴だ、ヤッチマエ!が先、
理屈は後で付ける。 が、同じヤッチマエでも、テロは逆です。 ビン
ラディン一味の<長期間をかけ、周到な準備>をするという特徴は、
感情なる一過性のもので維持できるわけ無いのです。 即ちテロ行為は、
邪悪ではあるが理性や意志の産物。 主張を掲げ、それにおける狙いを
意識し、それらを満たす手段に工夫を凝らし、そして断行! それが
<三分>どころでない<理>の証拠です。 クリントンの側近ディック・
モリスの回顧録「オーバル・オフィス」にこんな記述があります。
そもそも連続自爆テロの唯一の目的は、首相にネタニヤフを当選させ、
イスラエル拒否のアラブ指導者達が望む対決の時代に突入したかった
からだが、イスラエル国民はまんまと彼らの思い通りに反応して、、
(p.381 <Behind the Oval Office> 1997年 フジテレビ出版)
論理先行型のイスラエル人すら、でした。 当然、あの同時多発テロの
後、報復戦争に立ち上がったら彼らの思う壺だ、という声はありました。
が、たちまちエントロピーの流れに呑み込まれて行方不明。
立ち上がったのは大統領以下理性的検討の末、と信じたいが、始まれば
誤爆もある、市民の犠牲も出る、ラマダンも冬も近い、、 必ずしも
理屈通りにことは運ばない。 だんだん深みに、<思う壺>に、、
* * * *
<非対称戦争>、小が大の鼻面を引き回す。 悪漢どもの肩を持つ、と
誤解されないよう祈りますが、<小なること>が致命的不利ではないと
いう教訓と見れば、ビジネスにも応用できるでしょう。
よりブラックに言えば、それが自然の法則なら、いっそエントロピーの
流れそのものの仕事を選ぶと努力の割に実が結ばれやすい、、かも、、
ふーむ、気付いていなかったけれど、我がサーモスタット屋が大成功
したのは、そうした理屈に適っていたから、だったか。 そこで
今週の
<写真>は、小が大を引き回す快感に浸っていた頃の私、です。■竹島元一■
★ 29歳の夏 ★
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